今市隆二さんのソロツアーに行った

以下、セトリバレはありませんが演出の濃厚なネタバレがあります。

 

RYUJI IMAICHI LIVE TOUR 2018『LIGHT > DARKNESS』福井公演2日目に行って来ました。

三代目JSBツインボーカルのひとり、今市隆二さんのソロライブです。いま同時進行でもう一人のボーカル登坂広臣さんのソロツアーも開催されています。

ツアーにはコンセプトがあって、今市さんのはこう。

 

どんなに深い闇であったとしても、

強い意志があれば光は見つかる。

LIGHT>DARKNESS

想いがあるから、光はさらに輝く。

世界の才能たちとの出会いから生まれた

答えがここにある。

 

詩的なようでストレート。三代目のツインボーカルは対照的な二人とされていて、今市さんが光と闇、登坂さんは月をテーマにしたツアーを開催している。

今市さんについて詳しい方はたくさんいらっしゃると思うので説明を省き、最近三代目を知った私のふんわりした印象からいくと、ゴリゴリの見た目とはうらはらに繊細な一面を持った人という感じでした。

三代目のライブを見ていてもMCがとても優しい。かわいいと言っても差し支えないくらい、優しい笑顔とやわらかい口調の持ち主だ。そんな彼からまず「光と闇」というテーマが出てきたことに驚いた。どちらかというと「太陽とビーチ」「焼肉と白米」みたいな人だと思っていた。

「光と闇」。二項対立にエモを見出す私(性根がオタク)としては、彼がこの二つをどう解釈し、LIGHT>DARKNESS、光の勝利を導くのかが気になった。

以下、セトリバレはありませんが演出のネタバレがあります。

 

 

ライブはすごく楽しかった。今市さんの持つ品の良さというか、ゴージャスさというか、そういうものが常にステージから振りまかれていたように思う。ファビュラスという形容詞が頭の中に浮かんでは消えた。ファビュラスってこういうことを言うんだ……。

今市さんが素肌の上にシルクっぽいシャツを羽織って出て来るところがあって、私の隣のギャルたちが「ねえ透けてる!ねえ!透けてる!」と混乱した叫び声を上げていたのを覚えている。透けてた。透ける背筋がめちゃくちゃセクシーだった。羽織ってるだけなので胸とか腹は素肌なんだけど、むしろ透けてる背中の方がセクシーだった。チラリズムってこういうことを言うんだ……。

今市さんのMCはやさしいと述べたが、今回はやさしいを通り越して天使だった。『Angel』という楽曲があるのだが、ほんとうに天使。「いくよぉ!」という煽りとともに走り出し歌い出す今市さん。「いくよぉ!」だって、へへ、といまだにニヤニヤしてしまうほど、可愛い言い方だった。

「いくよぉ!」もヤバかったのだけど、ほかにも観客との絡みと言うか、コール&レスポンスが独特で、これはひとえに今市さんの天然ぶりと、あとはこれまでずっと三代目で登坂さんと二人でMCをやってきた(そもそも三代目ライブはMCの入る隙があまりない)せいもあると思う。

「楽しんでますか!」と聞いておいて「いっぺんに返事されてもわからないよお」とへらへら笑ったり、かと思えば観客と一生懸命対話しようとしてMCに妙な間が空いたり、観客の盛り上がりに対して「昨日のほうがよかったなあ」「良いのか悪いのか分かんないなあ」とぼやいてみせたり、サイン入りフリスビーが当たった観客に対して「フリスビーw良かったねw」と半笑いで対応してみせたりと、いい意味で自由でリラックスしていた。王様のような振る舞い。我々は間違いなくあなたがこのステージで王様だよ、と彼をみあげるばかり。

 

終始こんな感じで可愛さ、格好良さ、綺麗さ、美しさでステージを沸かせるかと思いきや、グッと観客を惹きこむ演出が核にあり、今市隆二という人間の複雑さを垣間見た。それが、冒頭で触れたLIGHT>DARKNESSの部分である。

まず、ライブの最初から、楽曲も演出もLIGHTのものだった。これは後になってからはっきりと対比に気がつくのだが、白い衣装に明るい照明、透き通るような今市さんの歌声。踊っている間もサポートダンサーやバンドの方々ととても仲良し。今市さんのダンス、キレキレでした。踊り込んでるからか、MVよりもさらにキレキレ。

特に凄かったのは中盤以降のDARKNESS部分。

唐突に会場が暗くなり、モニターに映し出されるおどろおどろしい光景と、黒いマントとフード姿の男。驚くことにその男は今市さんなのである。あの、光の塊のような人が、闇そのものの姿で立っている。いつの間にかステージの上にはモニターで見たいくつもの黒いマントの人影がいて、その中央に立つ人物が今市さんの声で歌い出す。

ビジュアルにも凄味があった。まったく露出のない黒いマントにフード、胸にはとんでもなく大きな十字架のネックレス。

私はどちらかというと芝居脳なので、「今市さん、さっきまで光だったのに今度は闇に扮するのか。一人二役すごいな」としか思っていなかった。同時に、「LIGHT>DARKNESSだから、このあと光が闇を倒しに来るんだろうな。一人二役だけどどうするんだろう?映像を使うのかな?」と思っていた。

こうやって私が物語調で考えたのは、三代目のライブがメトロポリス、アンノウンメトロポリスと、かなり物語性の強い演出だったからだ。ここまではっきりと光と闇が描かれたのだから、LIGHT>DARKNESSのテーマに則って光が闇を倒すのだと思っていた。

 

ところが、今市さんのLIGHT>DARKNESSの解釈は、そんな単純なものではなかった。

DARKNESSパートの最後に悲鳴が起きた。私も思わず悲鳴を上げた。

どことも知れない真っ赤な背景を背に、DARKNESSの今市さんは両手を広げ、背中から崖下に飛び降りるのだ。視界からフッと消える今市さんの体。こう言うと今市さんを大切に思う人たちを傷つけるかもしれないが、あれは完全に自死のシーンだった。もしくは生贄だった。私も予想以上にショックを受けた。

考えてみれば、DARKNESSパートの今市さんはずっと苦しそうだった。DARKNESSは生まれた瞬間からとても苦しそうに歌い踊る。今市さんにとって闇とは、産まれること自体が矛盾で葛藤を孕み、いずれ光に追放されることを避けられない存在だということ。いや、闇は今市隆二の姿をしていたので、闇の彼が光の彼に耐えられず、自分を殺したのかもしれない。あの今市さんは、普遍的な世界中の闇を一身に背負って消えたいわば巫女的な存在なのか。それとも、彼自身の心の闇を表すのか、どっちなんだろうか。

今市さんの消えたステージを茫然と眺め、そんなことをぐるぐる考えた。パッと消えてしまったDARKNESSの今市さんの姿ばかり目に浮かぶ。

とにかく、闇は光に打倒されるのではなく、自ら消滅を選んだのだ。考えてみれば、今市さんらしい、あまりにまぶしい選択だ。まぶしすぎて惨いような気もするが、やっぱりまぶしい。

 

そんな激ヤバ演出を終えた後も、今市さんはけろっとした顔でステージに再び現れ、ライブの続きをやっていく。

なんだか夢をいくつも見ている気持ちになった。

ライブを終えて二週間ほどが経ち、何度考えても今市隆二という人間の計り知れなさにぼうっとする。

これまで今市隆二の中にも闇は生まれ、きっとその度に彼はそれを殺してきたのだろう。人知れず幾度も幾度も。三代目のボーカルとして、そして、彼の歌手としての人生の中で、これまでもそしてこれからも繰り返されていく長い長い孤独な戦いだ。

LIGHT>DARKNESSとツアータイトルに打ち出しているように、彼の中ではもう既に勝敗はついていて、何度闇が生まれても、それは間もなく消える物なのだろう。

だが、それで彼の心が摩耗しないはずがない。あんなにやさしく笑う人なのだ。

彼の長い戦いの道程に、相方である登坂広臣や三代目のパフォーマーの五人の姿が、これからもかぎりなく長く共にあれば良いと願っている。