HIROOMI TOSAKAソロツアー FULL MOON

FULL MOONがものすごく良かった振り返り日記。

 

登坂広臣のことを知ったのはここ一年ほどで、去年2017年の11月頃。確か彼のソロ名義で初めて聞いた曲がLUXE。この曲が凄くて、他を寄せ付けず、他者の評価を受け入れず、誰に何と言われようと突き進む曲で、これが発表された時に私はショックを受けた記憶がある。彼の苦しみの一片を知ってしまった気がした。

それで、なんとなくソロツアーの内容もメッセージ性の強いものだと思っていた。登坂広臣がキツくてとっつきにくい人ではなく、むしろめちゃくちゃ可愛げがあって熱い男だということは分かっていたのだが、LUXEで見た彼の葛藤と拒絶と修羅の姿がどこかに残っていた。

 

ところが、ライブはというとものすごくハッピーでエンタメ性が高く、登坂広臣のユーモアと温かさと格好良さが全開で、なによりファンが見たいと思っているであろうものを彼の側できちんと汲み取って、さらにその予想を超える形で提示してきた。例えばスクリーンに映し出される巨大な月だとか、それを背景に現れる登坂広臣だとか、玉座に座って歌う登坂広臣だとか、女性ダンサーと踊る登坂広臣だとか、ムービーのアクションだとか、ゆるくて熱いMCだとか。

特にEND of LINEで彼の考える「終わり」とその先にあるものへの考え方に触れられたのが良かった。これを歌う前に必ず長い長いMCが入る。毎回微妙に言っていることは違った。三代目である種の成功をおさめる事は出来たが、ファン(他者?)との距離を感じてしまうようになった。次に自分たちは何をすればいいんだろう。寂しく感じる。自分は災害を防ぐ事は出来ないし、世界を救うことも出来ない。だからせめて、ここに来てくれた人たちだけは少しでも幸せになって欲しい。生きていれば必ず終わりが来る。その日が明日来ても良いように悔いのないように生きていきたい。

何十回とこなしてきたMCのはずだが、毎回言葉を選んで長い時間かけて自分の思いを話し、それでも少し納得いかないというように話を切り上げて歌い始める。

 

登坂広臣みたいな誰もが憧れる綺麗な顔で歌が上手くて人気があって、そういう人でもいつか来る「終わり」を考える。このツアーの終わり、このアルバム制作の終わり、この撮影の終わり、そして誰かとの永い別れ。彼はその終わりが来るたびに哀しみ、寂しさを覚え、「終わり」について考えてきたのだろう。いずれ迎える終わりは、それが必ず来るのであるならば、明日でも変わりがない。だから悔いのないように生きるし、自分と関わりを持った人には少しでも幸せになって欲しい。

アンコールの最後に歌うのはHEART of GOLDで、この曲に関してははっきりと彼の口から「僕からみなさんへ向けたメッセージです」と告げられる。すごくハッピーな曲調で「生きてると苦しいこともある。でも乗り越えられるよね?俺は乗り越えられる」という堂々とした宣言の曲だ。オーラスでは「一緒に最高の人生を歩んでいきましょう!」なんて言葉でMCを締めくくり、ライブツアーの終わりを迎えた。

頑張っていかないとな、と思う。葛藤を抱きながらも、登坂広臣は「終わり」を静かに見据えて生きている。さらには自分の人生だけじゃなく、私達ファンの人生まで祝福せんがために歌うと言ってくれる。いつか訪れる彼の終わりも、彼の過ごす時間も、彼の理想に近いものであれば良いと願った。