懲りずにまたマッチングアプリ(ペアーズ)をやっていたら、写真詐欺の男にあたった話

今回使ったアプリ→Pairs(前回はOmiai)

 

なぜこれを書いているのか

タイトル通りの案件があったからなのだが、実際思っていた以上に情緒を乱した。

写真詐欺だった男がどうこうというよりも(彼が私の数少ないマッチングアプリ経験至上もっとも変ではあったが)、彼に会ったことで私と私の友達の縁が切れかねない危機に陥った。

そのことについて思うところがあり、これを書いている。

 

 

ペアーズをやめた理由 大きく2点

 

今回、私がペアーズを始めたのが12月上旬、やめたのが12月中旬。たしか、前回のオミアイを2か月ほどやっていたのに対して、今回約2週間の短期間でやめた理由のひとつに、先に述べた男がマッチングアプリで出会った人間史上、最も変だったことがある。

そしてもうひとつの理由が、この人間と出会ってしまったことにより、勝手に私の情緒が狂い、友達をひどく傷つけてしまったことにある。

 

 

前者の理由について

 

マッチングアプリで出会った人間史上、最も変だった彼について話そう。長いです。

結論から言うと、何度も言っているとおり「プロフィール写真が詐欺レベル」だったのである。

女性ユーザーが加工アプリを使用してプロフィール写真を盛る、実際会ってみたら全然別人だった!という話はわりと聞く。それの男版だ。

私も加工アプリは友達との自撮り等で使うし、プリクラもごくたまに撮るし、友達がインスタに上げる加工済み写真を日常的に見ている。なので、写真を見ればたいてい「この写真はこれくらい盛ってるな」とわかる程度のいわゆる現代の人間だ。

ところが、彼に関しては本ッッ当に分からなかった。

後になって考えてみれば、

・おしゃれスナップカット風

・一眼レフ的ないいカメラ(頭の悪い表現)で撮った雰囲気

・彼の職業がグラフィックデザイナー

だったので、怪しい要素満載なのだが、

・とはいえ顔全体が映っている

・服装もカジュアルかわいい感じで清潔感がある

特に顔全体が映っていたことで、私はこのプロフィール写真をそれなりに信用してしまったのである。多少実物がぼやけていたとしても、そこまでこの写真と違うことはないだろう。それに、人は見た目じゃないし!(大嘘)

そう、彼と会うにあたってアプリ上のメッセージもラインももちろん行った。

私は趣味で文章をわりと書くほうなので、その人の文体から、その人の人柄を把握できる程度の能力を持っている。まったくもって、普通のいい人そうだったのだ。やり取りをしている感じでは。

ちなみに、彼と会うにいたるまでに同時並行で10人ほどとマッチングし、メッセージのやり取りをし、文章のやりとりだけで「ウヘェ」となって尻尾を巻いて逃げ出した相手達がいる。

さいわいなことに、彼は私の「ウヘェ」センサーをかいくぐり、また、私は彼の「ウヘェ」センサーにも引っかからなかった。そういうわけで会うに至ったのだが。

これも「今になって考えてみれば」シリーズのひとつなのだが、彼は私と会う前に「事前に電話しませんか?その方がお互いに緊張しないですし」と提案してきた。この誘いは正直うれしかった。気が利く人だなぁとさえ思った。

そして、いざ電話してみると、開口一番、

「プロフィール写真とイメージ違いますね」

と言われた。説明しておくと、私の声と喋り方はぼのぼのドラえもんと近似している。

私がペアーズにのせたプロフィール写真のトップにくるものは「ライブ前に友達と自撮りした、テンション120パーセントの笑顔の写真(美肌加工)」だ。

要するに、彼が写真から想像していた私はめちゃくちゃ明るい喋り方で、よく笑い、ビシバシ気持ちのいい返事をしてくれる人間だったのだろう。

だが、私は生まれ持っての気性の荒さを、喋り方で内外的にコントロールしている人間だ。そんなことするなよ、という感じだが、そういうわけで喋り方について指摘されるとわりと情緒がぐわんぐわんになる、時もある。

というか、私はその笑顔120パーセント以外の写真(これは無加工)も3枚ほど載せていたし?そのほかの写真は落ち着いたイメージのものだったはずだ。

それに、一日働いた後、夜21時に初対面の人間相手の電話においてそこまでテンション上げられるわけねっだろっ。

「プロフィール写真とイメージ違いますね」

これは伏線です(ブチ切れ)。

 

実際に会った。

 

実はここにもひと波乱あり、本来は日曜に会う予定だったのだが、例の電話の中で土曜日も会うことになったのだ。波乱というか、私が断ればよかっただけの話なので、私が悪いのだが、私は平日働いており、なおかつド田舎住みなので、平日に服飾品を買うことが難しい(そのレベルの土地)。土曜に何かしらの買い足しをして、日曜に挑もうと思っていたのだが。

私は突然の予定変更に弱い。

めちゃくちゃ弱い。

彼に「土曜日も会いませんか」と電話で言われた時点で、頭が真っ白になり、イエスと答えてしまった。馬鹿野郎。

電話が木曜の夜だったので、私は金曜日の夜、必死で手持ちの服の中からそれなりに見える服を選んだ。別に彼のことは好きではないが、話もそれなりに合うし、なにより初めて会う人間を前に、みっともない恰好はできないだろう。

「今になって考えてみれば」シリーズその2。哀れ……この努力はわりと無駄だった。

 

 

対面―苦行―

 

そういえば、例の詐欺写真がどんな感じだったかというと、劇団EXILE小野塚勇人をちょっと薄味にした感じの男が写っていた。どうですか?男前でしょう。劇団EXILEは2020年2月に本公演を行うのでよろしくね。

当日、小野塚くん風をさらに薄め、なんならしゃくれさせ(横顔は知らないし)、太らせた人間(数年前の写真かもしれないし)、が現れてもいいように、私はそれなりに緊張していた。

だが、当日、私の目の前に現れたのは……

なんというか、南海キャンディーズの山ちゃんを不潔にし、天パにし、やや薄毛にした感じの男だった。

マジで私は視界が白くなったし、卒倒しかけた。

私の心の中は

「誰―――――!!」「プロフィールに身長163cmって書いてあったけど153cmの私と目線が同じ!!」「なにその寝間着みたいなヨレヨレ黒スウェット!!」「詐欺じゃん!!」「変なメガネかけてる!!」「怖い!!」

という狂いなき本心と、

「ひとをみためではんだんしてはいけません」

という道徳のささやきが強烈な死闘を繰り広げている。

思ったのだが、道徳というのはあまたの本音をたったひとつの言葉で封じ込む呪いの側面を持っている。

呪いの力によって思考停止した私は、山ちゃんと連れ立って店に向かった。

本当に、こんなことを言うのは最悪だが、なんで私は第一印象で「生理的に無理」だった人間と一緒に歩いてこれからランチに向かうんだろう、という疑問でいっぱいだったが、口は勝手に雑談を繰り広げていた。

ランチはカフェの対面席で。正直、全然彼の顔を直視できなかった。プロフィール写真と彼の顔があまりに違ったのが恐ろしかったのだ。だが、どうやら本人らしい、というのは彼の顔を盗み見るうちに分かってきた。

あのプロフィール写真はおそらく「数年前に」「いいカメラで」「ちゃんとした格好の日にプロに撮ってもらって」「グラフィックデザイナーの腕によって加工」されたものなのだ。

私はFBI捜査官のように脳内にある彼の写真と、目の前の彼の耳の形を一致させようとした。人間の耳の形は、指紋と同等かそれ以上に個人を特定する機能を持っているらしい。

私がもうろうとしながらそんなことを考えている(この間も表面上は普通に会話している)

と、料理が運ばれてきた。彼がステーキセットみたいなやつで、私がなんかおしゃれなカレー。

彼はなにを思ったか「それちょっとください」と私のカレーにフォークを突っ込んできた。「もらっていいですか?」とかじゃなくてもう「ください」だし、食い気味(直喩)で突っ込んできてるし、私がまたしてもフリーズしている間にことが終わっ……ていればいいのに!彼はフォークを使っていたもんだから!カレーをぼろぼろこぼす!(キーマカレー

きたねえなぁ……(ぼんやり)

と思っていたら、彼の話は「レンタルスペースで友達とカレー屋をやろうと思う(俺はカレーが好き)」と展開している。まあ、普通に楽しそうっすね。ところで、なんでカレーをオーダーしなかったのだ?私の頼んだキーマカレー以外にもカレードリアとかあったし、なんなら私より先にきみは「肉にする」と言っていたのに?

なんだか、すべてにおいてチグハグしている……。

 

何を喋ったかあまり覚えていない。本当に、うーん、カレーは美味しかったなということしか覚えていない。

山ちゃん「舞台観られるんですよね?なんの舞台ですか?」

私「NACSとか新感線とか、あっあとプロフィールにEXILEが好きって書いたと思うんですけど、(来年は劇団EXILEの舞台観ます)」

山ちゃん「あーっその話題触れないようにしてたのに!知らないから!」

しらけるー!知らないからなんやねん!会話する気あるんか!?

思わず半笑いで「来年は劇団EXILEの舞台観ます」とだけ言って、その話は終わらせてしんぜました。

彼はそのあと「京都の方にいることも多いから自分はそっちの舞台を観ることが多い」と喋ってましたが、私は「京都の劇団のこと知らないから!」とは言いませんでしたよ。礼儀ですので……。

はあ、今思い返すと馬鹿馬鹿しいな。礼儀をはらってる場合じゃないだろ自分。

 

 

それでなんだかんだ2時間弱くらいその店にいたのですが、さすがにつらくなってきたので、

「そろそろ……山ちゃんさんお時間大丈夫ですか?」

と、暗に店を出ようぜ、ランチだけでこれ以上居座るにも気まずい個人営業の店だし、と言ったのだが、

「え、ぜんぜん大丈夫ですよ!」

と笑顔~やめてくれ~ぜんぜん大丈夫じゃないから。

確かに「そろそろ出ましょうか」とはっきり言わなかった私が悪い。いや、悪いか?さっぱりわからん!

結局私は「実はこの後用事があるので(本当)」とはっきり言って店を出ることになった。

で、古より戦争の火種となる、お会計問題。

私は財布をスタンバイしていたが、山ちゃんは「ここは自分が」とのこと。ヘヘエ、と思いつつとりあえずレジまでついていくと、山ちゃんが言うことには「カード使えますか」とのこと。

やばいぞ、と思う私。なぜなら、厳選した気の利いた店とはいえド田舎の個人経営の店。なんなら、今年はじめて県内の駅に自動改札機が導入された地。そんな電子マネー後進国においてカード決済が、

店員さん「すみません、カード使えないんです」

やっぱりそうですよね!すみません店員さん!なぜか申し訳なくなる私。なぜかって、明らかに山ちゃんの発するオーラが負・焦・憤になったからだ。いや、そんなことで焦るなよ、まさか現金を持っていないのかい?

店員さん「2500円になります」

山ちゃん「2000円しか……」

あーはい!

私「私の1000円を!」

それでお会計を済ませ、お店を出た後に、

私「ごちそうさまです」

山ちゃん「いえいえ(にっこり)」

いえいえじゃねえよ本当に、本当に、なんにも分かっちゃいねえな。カード払いを要求して店員さんを困らせたことも、全額払うと言ったにも関わらず私にお金を出させたことも、そもそも人と会うっていうのに現金2000円しか持ってきていないことも、そういったゴチャゴチャがあったにも関わらず、謝罪のひとつもなくなんか知らんがスマートげに笑ってるあんたは、なんにも分かっちゃいない。

なんだかなあ、と思いながら帰路につく。この時にはすでに明日、日曜夜に会う予定をポシャりたい気持ちでいっぱいである。だが、なぜか山ちゃんは私のことを気に入ったようで「じゃあ明日もよろしくお願いします!」と元気に帰っていった。

理由の分からない虚しさと惨めさに襲われた私は、用事があると言って切り上げたにも関わらず、寄り道してかわいい服を買って帰ってしまった。

 

 

私はついぞ「なんで写真とそんなに違うんですか?あれめちゃくちゃ加工してますよね?別人レベルですよ」と言えなかった。

もしかしたら、彼には自分が「ああいう風(加工後のすがた)」に見えているのかもしれない。なんだか常に自信ありげな雰囲気だったし。

そうだとしたら完全に心の病気だと思う。病気ならデリケートな問題だしな、などと、現実逃避に走っていたが、この出来事はかなり衝撃的で、とても自分ひとりで消化できず、家に帰って真っ先に友達にラインした。

その内容としては「マッチングアプリで出会った男が写真詐欺だった」「変なところはあるがおおむね害はない、いい奴だったと思う」というようなものだ。

一瞬で友達から返事がきた。

「良い人が詐欺写真をプロフに使うわけねえだろうが!」

そのとおりでございます。

私は正論に打ちのめされた。

・私は身なりを整えてそれなりに楽しみに思いながら行ったのに、相手は詐欺写真なうえにヨレヨレだった

この現実がうまく飲み込めず、私は完全に闇落ちしたと言ってもいい。

こちらが正々堂々と勝負を仕掛けようとも、自分なりに誠実に向き合おうとも、相手がこちらの思った通りの反応を返してくれるとは限らない。にんげんだもの。クソめ。

私は翌日日曜日の予定をキャンセルする旨のラインを山ちゃんに送り、ブロックした。

 

どうして、どうして、という問いでもない駄々が頭の中をぐるぐると周った。

どうして私はちゃんとした写真を、身バレも覚悟のうえでマッチングアプリに載せたのに、相手は違ったんだろう。

思えば私は子供のころから「想定外の出来事」に弱く「期待を裏切られる」ことに過敏な人間だった。

酷いときなんか、生まれて初めて家族とディズニーランドに行く朝、私は楽しみなあまり「この旅がうまくいかなかったらどうしよう」とダウナーになり、軽い鬱状態を起こして家族を困惑させた(この性質の原因は、私と同じ特性を持つ父の、突然のかんしゃくに日常的に怯えていたせいもある)。

これまでマッチングアプリで2人の人間と会ったが、この山ちゃんの一件はなぜか私を徹底的に落ち込ませた。

そして、最悪なことに、私は「良い人が詐欺写真をプロフに使うわけねえだろうが!」と言ってくれた友達に対して、希釈されないままの私の心の内の「どうしてどうして」という、どろどろとした気持ちをぶつけてしまった。

冒頭で述べた『この人間と出会ってしまったことにより、勝手に私の情緒が狂い、友達をひどく傷つける言葉を言ってしまった』の部分だ。

私がそれらの言葉をぶつけてしまった後、彼女は「これ以上やりとりを続けると、あなたのことを傷つけることを言ってしまうから、もうラインを見ません」というメッセージを送ってくれた。

私は一気に頭が冷えたし肝が冷えた。

私が彼女に甘えていたばかりに、私個人の悩みを、彼女の状態も考えずに送り付けてしまった。

はっきり言って、相手が彼女じゃなかったら縁を切られていても仕方がないくらい、支離滅裂で陰鬱なラインを送ってしまった自覚がある。

彼女が見てくれる可能性はごく低いが、私は彼女に謝罪の言葉を送り、マッチングアプリを退会した。これがペアーズをたった二週間でリタイアした理由と経緯である。

 

これはブログなので、はっきり言ってこれらの出来事から学んだことはほとんどない。

私は今年ふたつのマッチングアプリであまりいい体験をすることはできなかった(体力・精神・金銭的に消耗した)結果、友達との縁が切れかねなかった、という事実が残っただけだ。

あとこれは、完全に蛇足かつムシのいい話かつ個人的な話なのだが、どうやら私はいま結婚相手より恋人を欲しているらしい、という気持ちに気が付いた。とにかく今を楽しみたい気持ちが大きい。結婚って面倒くさそうだし。特にこのド田舎の風土でやるにはかなりの覚悟、もしくは鈍感力が必要だ(この辺りは長くなるので割愛)。

私はまったくもって学習能力がないし、ムシのいい人間だ。来年の自分もきっとムシがよくて、目先の楽しさにつられ、反省をすぐに忘れる。

しばらくは他人ではなく、そういう自分自身と付き合っていくしかないのだろう。